英語学習Q&A

 

Q1:リスニングの効果的な学習法を教えてください。

A. 難易度が低め(文字で読んだらすぐに意味がわかるレベル)の素材を用いて、「音声知覚」+「意味理解」という2つの段階それぞれについてトレーニングをしましょう。
 

リスニングの2つのプロセス

  1.  音声知覚 
    シャドーイング (shadowing)が効果的
  2. 意味理解
    意味理解の学習は、まずは50~100語程度の短いテキストから始めましょう。
    もし知らない単語や表現(熟語)などがあれば、辞書で確認します。未知の単語・表現が、100語中5箇所以上出てくるような時は、素材が難しすぎます。
 
リーディングでは理解できるのに、リスニングでは分からないときは、音声が聞き取れていない状態です。あまりにも発話が速すぎる場合には、スピードを遅くして再生する方法もあります。
例えば、YouTubeなどのwebサイトや、Windows Media Player(→拡張設定で変更)などのソフトウェアを使うと、速度を下げることができます。
  
 

Q2:「聞き流すだけで英語が身につく」というのは本当ですか?

A. いいえ、聞き流すだけでは英語は身につきません
  
私たちの脳には「選択的注意(selective attention)」と呼ばれるしくみがあります。そのため、意識的に注意を向けなければ、情報はほとんど記憶(インテイク)されません。

人間の脳には「ワーキング・メモリ」(working memory)と呼ばれる仕組みがあると考えられています。ワーキング・メモリは、情報を保持したり操作するための領域です。

例えば、外出する際には、「窓を閉める」「電気を消す」「財布や家の鍵を持つ」といった一連の段取りを必要な期間だけ、能動的・意識的に保持し、実行する必要があります。この際に用いられるのがワーキング・メモリです。

では、主たる作業の傍ら実行する「ながら」のリスニング学習にも、全く効果はないのでしょうか。認知心理学の分野では、組み合わせる作業の種類によって、「ながら」リスニングが効果的な場合もあることが示唆されています。

例えば、ラジオのニュースを聞きながら本を読むといった、複数の言語活動を同時に行うことは効果が低いことが示されています。

一方で、ジョギングや柔軟体操をしながら英語学習のCDを聞くなど、非言語的な活動と言語活動は、両立できると考えられています。

 

Q3:いわゆる「速聴」とは効果的なのでしょうか?

A. 学習者の注意の焦点に入らないくらいの速度で英語を聞いても、効果的なリスニング学習法とは必ずしも言えません。
  
Q2で解説したように、インプットは、学習者に知覚され、注意の焦点に入ってはじめて、学習に繋がります。そのため、インプット音声を2倍速や4倍速に変換して聞く「速聴」の効果についても、疑問符がつきます。

例えば、英語母語話者5人と日本語母語話者13人に、TOEIC®のPart 2 をもとにした音声を、(a)標準速、(b)2倍速、(c)4倍速で聞いてもらい、その際の脳活動を調べた研究があります (Kajiura, 2015; 梶浦, 2014)。

 

Q4:「シャドーイング」とは何ですか?どのような効果がありますか? 

A. シャドーイングとは、聞こえてきた音声をそのまま声に出して発音(復唱)する学習法のことです。
 
シャドーイングは、英語力全般、特にリスニング力の向上に大いに効果があることが、いくつかの研究からわかっています。
シャドーイングをする上では、次のような4つの処理操作をほぼ同時並行的に実行することが求められます。
 

シャドーイングにおける多重処理プロセス(門田, 2020, p. 27より転載)

上のを行うことでリスニング力、を行うことでスピーキング力の向上が見込めます。
 
 

Q5:読んだら分かるのに、聞き取ることができません。どうすれば聞けるようになりますか?

A. ある英単語を見た(リーディング)ときに頭の中でする発音と、同じ単語を聞いた(リスニング)ときの発音が食い違うことがなくなるようにしましょう。
  
英語の学習において、新たに単語を覚えようとする際には、誰しもこころの中で発音して(内的リハーサルと呼びます)、記憶に転送(インテイク)しようとします。「いや、自分は、体を使って実際に書いて覚えます」という方も、実は書きながらも発音をしていることがほとんどです。ここで問題になるのは、この内的リハーサルにおける発音の正確さです。

日本の英語学習者の場合、この音声が実際の英語発音とはかけ離れたものになっていることが多いようです。特に、英語の音節の仕組みとは別の、CVCV...(子音・母音...)の日本語の音節の仕組みをもとにしたローマ字発音になっていることが少なくありません。
代替文字
リスニングとリーディングが乖離した状態
代替文字
リスニングとリーディングが一体化した状態
未知語を覚える際の内的リハーサルを、ローマ字発音から脱却させること、これを何とか達成することが、皆さんの英語力を改善に導く最重要課題だと言っても過言ではありません。
  
 

Q6:「英語耳」というのは本当にありますか?

A. 英語耳」の根拠となっている周波数感知域のデータが明確ではないために、「英語耳」があると考えるのは問題があります。
 
英語耳」は、英語・日本語など、各言語を母語とする人たちには特有の周波数感知帯があるという、アルフレッド・トマティス(Tomatis)氏が提唱した「周波数帯(パスバンド)理論」にもとづく考え方です。パスバンドとは、「各民族が周波数の異なる音に対して持つ最大感度を測定し、それぞれの言語の周波数領域として表した」ものであると説明されています。

次の図 は、この理論の主な根拠となっている、各言語の主要周波数領域(感知域)を示したものです。
 

各言語の主要周波数帯域(パスバンド):単位Hz



しかし人の発する音声は、肺からの空気をもとに声帯(vocal cords)を振動させて作られます。通常は、日本語母語話者も英語母語話者も音の高さ(ピッチ)を形成する1秒間の声帯の振動数は、50回から200 回程度、つまり50~200Hz 程度です。

トマティスメソッドについては、「もう以前の自分の耳ではない!」「英語が上手に話せている!」というようにその効果を指摘する声も聞かれています。しかしそれが、「日本語耳」とは異なる「英語耳」を形成したためだと考えるのは、いささか問題があるのではないかと考えられます。

 

Q7:映画を見て英語リスニングを学習するコツは何ですか?

A. 音読を通じて自身の発音能力を鍛えることが必要です。
 
日本語や英語字幕なしで映画を観て十分に楽しめる、また英語がだいたい聞き取れる、という方はさらに色々な映画を観てリスニング能力を伸ばしていただければ結構です。

しかし、字幕を見なければほとんど聞き取れない、たまに理解できる単語や表現が聞こえる程度である場合にオススメする方法が、「なりきり音読」です。なりきり音読とは「シナリオを手に入れて、それをもとに映画の登場人物になりきって行う音読」です。
 
語彙力や文法力も必要ですが、特に発音能力(発音速度や、ローマ字的発音から脱却した発音)を伸長させることに注力しましょう。
 

Q8:リスニング練習にはどのような教材を使えばよいですか?

A. 読んだらすぐに意味がわかる素材で、特に日本の学習者が苦手な音声知覚を鍛えるシャドーイング教材がまず必要でしょう。
 
英語シャドーイングの学習が初めての人は、シャドーイングのトレーニング本がおすすめです。初級者~上級者までをターゲットにしたもの、初級・入門者用に絞ったものなど様々なものがあります。
 

初級

  • 三宅滋・太田恵子(2012)『日本一やさしい初めてのシャドーイング』成美堂
  • 玉井健(2008)『決定版英語シャドーイング 超入門』コスモピア
 

中級

  • 門田修平・玉井健(2017)『決定版英語シャドーイング:改訂新版』コスモピア
  • 門田修平・柴原智幸・高瀬敦子・米山明日香(2012)『話せる! 英語シャドーイング』コスモピア
 
近年はインターネット講座も充実しています。
特に、リスニングやシャドーイングのトレーニングができる学習サイトとして、コスモピアの「eステ」(コスモピア eステーション)があります。リスニング学習用には、聞き放題コースがお薦めです。

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